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2010年7月

2010年7月21日 (水)

埋蔵文化財の発掘にかかわる資格の話。

 ちょっと気になることがあって発掘にかかわる人間の“資格”について、調べてみました。

 なにも“猫ばば”体質の人は仲間に入れない方が良い、とか映画の世界のような下世話な“資質”の話じゃあない。現在、日本国内で実際に行われている発掘調査では、どんな資格が通用しているのだろうか、ということです。

 まず『埋蔵文化財調査士』というのがよく聞かれる資格名でした。

 こちらは日本文化財保護協会という団体が検定試験を行って発給しているもので、毎年度試験が実施されるようになってます。受験資格としては(1)“埋蔵文化財調査士補”の資格を取得後、3年以上の発掘調査実務経験を有し、調査報告書を3冊以上または研究論文等2編以上執筆している者、(2)国及び地方公共団体(埋文センターなどを含む)で発掘調査の実施、指導、監督などを行う埋蔵文化財行政に20年以上携わったことのある者、ということで、以上の受験資格を元に筆記試験と面接試験の成否で判断が行われてます。

 では、その“埋蔵文化財調査士補”なるものは? というと、(1)学校教育法による大学を卒業し、協会が認める関連分野を専攻した者で、発掘調査実務経験を4年以上(48ヵ月以上)有する者、(2)学校教育法による大学を卒業した者で、発掘調査実務経験を5年以上有する者、(3)前2項以外の者で、8年以上の発掘調査実務経験を有する者、と3通りの受験条件があり、こちらは3日間程度の講習と筆記試験が行われる。

 ちなみにこの資格を発給する日本文化財保護協会というのは、埋蔵文化財の発掘調査、歴史的建造物や出土品などの化学分析、修復、復元、保存などの業務に携わっている民間機関が集まった公益社団法人。2005年に民間の任意団体として設立され、2009年には社団法人化されています。

 WEBサイトで見ると(2010年7月21日現在)、241名の埋蔵文化財調査士がリストアップされ、調査士補は136名となっています。わずかというか、こんなにというか、微妙な人数です。

 で、実際に発掘調査にあたっている民間事業者の集まりだけあって(同、76社が参加している)、その意味では学術的な資格というよりは、現場の作業をコントロールできる能力を裏付ける資格で、文化遺産保護行政を実際の現場で支える人間に与えられる資格といえそう。
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 そしてもう一つの有力な資格が早稲田大学などの音頭取りでつい最近スタートした『考古調査士』でした。

 こちらは、“考古調査士資格認定機構”という団体が発給する資格で、加盟する全国の大学・研究機関に共通の統一的な資格審査・授与を行う組織、と説明されている。具体的には、大学等で埋蔵文化財調査を学ぶ“将来の専門家”たちに対して、正確で正しい発掘調査の技術や知識を勉学した証として与えられる資格です。

 現在、早稲田大学など7大学等が加盟しており、考古学調査士をめざす人に向けた専門教育が行なわれている。つまりこちらの資格はよりアカデミックな部分での資格といえる。

 資格を取得するための特別な試験とか面接があるわけではなく、加盟大学で埋蔵文化財に関連する単位の修得によって判断され、必要単位を修得した申請者の中から考古調査士資格認定機構により適否が判断されるという。

 一般社会人でも履修さえ行えば大学生と同様に申請資格が得られる“社会人課程”というのも用意されており、こちらは大学等研究・教育機関に設置された“社会人課程”の履修条件に従い、キャリアアップ・コース、リカレント・コース、マネジメント・コースの3コースのいずれかのプログラムを終了すればそれぞれの申請資格が得られるという。

 ちなみにこれらの申請資格は順に「2級考古調査士」「1級考古調査士」「上級考古調査士」と3段階の資格への条件となっており、2級は大学の学部コースと同等、1級は大学院コースと同等のレベルとなっているという。

 考古調査資格認定機構はあくまで民間団体で、機構の運営委員会の顔ぶれもほとんど大学の教授や名誉教授が占めていることからも性格が分かろうというもの。

 ちなみに文化庁が2009年3月に出した「埋蔵文化財保護行政における資格のあり方について(中間まとめ)」によれば、1994年に設置された“埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会”から「記録保存調査委において民間調査組織の導入を図る場合の発掘担当者の見極めに資格は有効で、引き続き検討が必要である」との指摘があり、それを元にここ数年で生まれた資格だったわけです。

 一方は発掘現場の企業団体から、もう一方は研究を行う学術畑のアプローチから、と異なった性格の2つ組織の資格が生まれました。

 このように発掘に関連する資格はこの数年で初めて誕生したのでした。ちょっと驚きでしたね。それまではあくまで“経験”がすべての世界だったのでしょうか。
 新たにスタートした埋蔵文化財の発掘に関連する資格の話題でした。

--2010年7月21日

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